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心の新しい扉を開く音楽 vol.02 夜長 Long Night

Text: Keiko Kamijo

心の新しい扉を開く音楽 <br />vol.02 夜長 Long Night

2010.10.01.UP

真夜中の読書のおともに

トウヤマタケオさんの新譜はピアノソロ作品。たくさん書きたいことがあって、困りましたが、トウヤマタケオさんをご存じない方のために一言ふたこと。ピアノソロ作品を作るという、ある種の朴訥な精神は、ほとんど秘教的なものです。サティは煩いパリで身を潜め、またモンポウというピアノ音楽しか書かなかった作曲家は、その生涯のほとんどをカタロニアで過ごした。ピアノが伝える内密の空間は、しかし森のように無限に深い。トウヤマさんの過ごした時間を、静かな時間に聴いてみて下さい。ちなみに、トウヤマさんをどこか知らない場所へ閉じ込めたのは、画家nakabanの装画です。

トウヤマタケオ「三月のワルツ」(windbell)


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眠れない夜をさらに眠れない夜にするために

ローリー・アンダーソンの10年ぶりとも言われる新譜。パフォーマンス・アートの草分け的存在がいまなお放つ「前衛」の香りに、巨匠しか持ち得ない凄みを感じるのは、僕だけではないでしょう。たとえ「前衛」と「巨匠性」とが、皮肉を帯びた矛盾をはらんでいるとしても。いや、美しさとは「若さ」であり、六十歳を越えた彼女の声が、なおその若さで強く訴えかけてくるのだから、これは生きた「前衛」であることの証明なのだ。メレディス・モンクの芸術が、やはり彼女の肉体に結びついているように、やがては滅んでいく儚さもまた強さでしょう。こうして新譜を手に出来る、同時代人としての喜びを、いまは素直に噛みしめたい。

「Homeland」 (Nonesuch) ローリー・アンダーソン


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夜汽車に乗って

1930~50年代アメリカのバンド音楽がコンセプトというモリアーティ。ふとしたきっかけで昨年知ることになり、実は一年中、狂ったように聴いていたアルバムです。ローズマリー・モリアーティという女の子がヴォーカル。そして、他のメンバーは皆モリアーティの姓を持つ男兄弟ということですが、これは架空のことのよう。ミュージックビデオでその完璧に演出された世界観を知ることができます。しかしながら、切なくノスタルジックな歌声が聞こえた瞬間、なにが本当で嘘なのか、虚実の向こう側へと放浪が始まってしまうのです。

モリアーティ 「不思議の国のモリアーティ」(Plankton)


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優雅な夜の食卓に

「クリスティーナ・プルハーはオーストリア出身の女流指揮者。テオルボやハープといった古楽器の研鑽を積んだ後、パリに拠点を移すと、2000年にL' arpeggiata (ラルペジャータ)というグループの活動を始め注目を集めます。Teatro d'amoreは、イタリアの作曲家モンテヴェルディに取り組んだ意欲作です。バロック音楽が実は多様な演奏が可能なのは知られていますが、このグループの解釈は、これまでになくユニークでおしゃれ。モダンなアプローチが嫌味なく聞こえるのは、高い技術と、清廉な感性の賜物でしょう。舞台ではバレリーナも登場するそう。

クリスティーナ・プルハー 「Teatro d'amore」
(EMI classics france)


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阿部海太郎 Umitaro ABE


1978年生まれ。音楽家、作曲家。
自作をピアノやヴァイオリン、パンデイロ等、様々な楽器で演奏する。東京藝術大学とパリ第八大学にて音楽思想史を研究しながら、実験映画や舞台などへの音楽制作を行う。帰国後、シアタープロダクツのファッションショーや、D-BROSの映像作品の音楽を制作。07年に1stアルバム『パリ・フィーユ・デュ・カルヴェール通り6番地』を、08年に2ndアルバム『SOUNDTRACK FOR D-BROS』を発表。コンサート活動の他、サウンドトラックの分野でも活動の幅を広げ、これまでに蜷川幸雄演出のシェイクスピア作品、映画『ホノカアボーイ』、花王ソフィーナ・ボーテのCF音楽などを手がける。8月に発売されたコンピレーションCD『apart my surround』に参加。現在『じゃじゃ馬ならし』(蜷川幸雄演出・10月公演)、『カーディガン』(田村孝裕演出・11月公演)の音楽制作に取り組む。
http://theatremusica.com/

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